健康「いろはガルタ」  《る》

 《る》 ルビさえあればルーツが分かって親しみがわく

 このブログの第一日目が「高山植物の名前」についてでした。
その時は命名に関する話題でしたが、今日は表記法です。
ん?それって健康情報なの?と思われた方、今日は頭の健康体操だと思って読んでください。

 植物園や親切な登山道・散策道では植物の名前が札に書かれています。
それはそれで有難いのですが、殆どがカタカナ表記です。
ホタルブクロ:「なるほど、この袋状の花に蛍が入っていそうなイメージだね」と、        
       一発で理解できる名前もあります。
ネジバナ:おぅ、花が茎の周りにねじれてくっついている!
カニコウモリ:ふむ、葉っぱの形が蟹の甲羅みたいでもあり、こうもりの翼みたいでもあるな。
ヤブレガサ:なるほど、ビリビリに敗れた雨傘そっくり!
では
ツマトリソウは? 妻を取る?? 誰の???
チングルマ? チンは英語の顎?? クルマは車でしょうねえ??
シナノキンバイ? 恥ずかしながら、遠い昔、初めてこの片仮名を見た私の想像したものは、
       何故かギラギラと輝く金蝿でした。
グンナイフウロ ?????

これらを漢字で書くと、
ツマトリソウ:《褄取草》:褄とは、着物の裾の左右両端<腰より下部のへり>のことで、
      <端(つま)>がもともとの言葉だそうです。
      この植物の白い花びらに薄いピンクのふちどりがたまに見られるので、
      和服の褄をつまんで持ち上げた時に見える、着物の赤い裏地に見立てたそうです。
                 「野草の名前/高橋勝雄・著/山と渓谷社)より

チングルマ:《稚児車》:梅に似た愛らしい花が終わった後、毛のついた実<そう果>が
      風車のような羽毛状になる。この状態が、「江戸時代のいっとき、幼児の髪型として
      流行った唐子髷<からこまげ>」に似ているので、稚児の風車という感じで命名。

グンナイフウロ:《郡内風露》:山梨県東部を昔、郡内と呼んだそうで、
        その郡内で初めて発見された風露草。
キンバイソウ:《金梅草》:花の色が輝くような金色で、形が梅に似ているから。

 登山道でここまで詳しい情報は必要ないでしょう。仮名表記で名前さえ分かれば、
それで満足という人も多いかもしれません。ですから以下は私の個人的な願いです。

 動植物の名前は、上記のように片仮名の後に漢字を後付けするか、
漢字にルビを振るなどして、音と意味の両方がわかるようにして欲しいのです。
日本には漢字という美しい表意文字があるのですから、それを見ることで、
命名者の意図や想像力に触れることができるし、その植物に親しみがわきます。
難しい字も、興が乗って、覚えてしまうかもしれません。

 表記法に関しては、日本植物学会や動物学会、学術会議などの取り決めがあるようですが、
再考を願ってやみません。

 ここで私の好きな、美しい漢字表記の花をご紹介します。
風露草<フウロソウ>:夏の朝しばしば、花びらに露が降りるが、この花の茎は不安定なので、
           僅かな風でも揺れて、球形の露も揺れ動くから。
舞鶴草<マイヅルソウ>:葉の形が空を舞う鶴の羽根のよう。
更紗灯台<サラサドウダン>:花冠の縞が更紗模様。ドウダンは灯(燭)台のこと。
              分岐の形が結び灯台の脚に似ているため。
雲間草<クモマグサ>:雲が去来する高山に咲くから
雪笹<ユキザサ>:笹に似た葉の先端部に雪の結晶のような小花が咲く
金鈴花<キンレイカ>:金の鈴のような黄色の小花が咲く。
鈴蘭<スズラン>:言わずもがなで、鈴のような愛らしい小花が蘭のように連なって咲く。

 以下は、ちょっぴり悲しい笑い話です。
ウツボグサは空穂草または靫草と書きます。靫は、竹や木で出来た筒状の携帯武具で、
矢を収納したそうな。この形が、この植物の花後の枯れ穂と似ていたから。
艶やかさはないけれど、紫の濃淡の小花が穂状に固まってつく様は、私好みの花です。

 ところが私の夫はこの花が嫌いだそうです。その理由がふるっていて、
1.生まれつき蛇が苦手・大の蛇嫌い。
2.「ウツボ」という響きが、魚のウツボを連想させる。
3.ウツボは形が蛇に似ている。→だから空穂草が嫌いだなんて、Give me a break!

インターネットの投稿にもこんな記述が・・・・
《私自身、「セミクジラ」は何故「蝉鯨」なのかと疑問に思っていた幼少時代がありまして、
「背美鯨」だと知ったのは小学校も高学年になってからだったと記憶しています》

上部へスクロール