著者・久坂部医師は外務省の医務官として色々な国での経験を紹介しています。
イエメンは高温多湿で遺体の保存が難しい故の淡々とした処理とスピード。
サウジアラビアは神の思し召しで葛藤を解決・・・・・
そしてウィーンの記述で私が面白いと思ったのは、
p.67 ウィーンの特徴は、街全体が死を拒んでいないことです。
人間が死ぬのは当たり前、死は忌み嫌うばかりでなく、
興味の対象とも捉えられていたようです。
著者の在勤中にウィーンの市立博物館で「死の肖像展」が開催されていて
「死に関するあらゆるもの」が集められていて、デスマスクとか、
ライフマスクとかを見たそうです。
日本人だったら「ギャー、そんな気持ちの悪いもの、見たくなーい!」
という感じのおどろおどろしいモノのようです。
p.68 デスマスクはリアルな死に顔ですから、90個ほどのそれぞれが、
死の直後の無力さをたたえていて、不気味な静けさを感じさせ
ました。どんな偉人も有名人も、死んだらこんな顔になるのだと、
死の平等性を強く印象づけられたものです。
興味が湧いた方は本書をお読みください。
私はその思考法に驚き、今までの自分の中になかった感情が
動くのを感じました。が、だからといってわざわざ見に行きたいとは
思いません。
ところ変われば死生観がこんなにも変わるのだ・・・・・という驚きと、
日本人は、もっと変わるべきだという感情も湧いてきました。