P.229 閉じ込めるな、放牧せよ!
真剣に高齢者の居場所を考え、実践を重ねる著者二人の、お奨めの一つは、
愛媛県松山市にある宅老所<あんき>のようなスタイルです。
(丸尾)宅老所とは、民家または、民家に近い建物を使って、
お年寄りを預かる施設のこと。
介護保険のサービスを使えるところは使いながら、だけど介護保険制度では
なかなか手が届かない部分にも独自の手法でサービスを提供している。
基本は、家庭的な雰囲気を重視すること。少人数であること。
*********************************************
最後に、<どんなに周到に考えて実践されている介護でも、起こりうる悲劇>として、
重大な事件と判決をメモしておきます。
P.175 認知症の91歳のおじいちゃんが電車にはねられ亡くなった、名古屋の事件。
名古屋地裁が、そのご遺族に対して、電車遅延などの賠償金720万円を
JR東海に支払うよう命じました。
おじいちゃんは要介護4で、85歳の妻と二人暮らし。事件当時は、長男の嫁が
手伝いに来ていたが、二人がちょっと目を離した隙に、このおじいちゃんは
ドアを開けて、外に出て行ってしまった。
P.179 今回、賠償責任を問われたのは、85歳の要介護1の妻と、横浜在住の長男。
裁判所は判決理由をこう述べた。
「長男は監督責任者なのに、認知症が進行している父親のヘルパー手配など
在宅介護の続ける対策を取らなかった。85歳の妻も、目を離さずに
見守ることを怠った。
この判決に対する長尾医師の意見は、
P.177 1.鉄道会社への賠償は必要であるが、遺族に払え、というのは酷。
2.理想論かもしれないが、自動車保険のように、
「認知症自己保険」なるものを作るべきだと思う。
認知症の人や家族がこのような事故になった時に、
助け合っていけるような保険が早急に求められているのではないか。
早く作ってほしい。が、当分は無理でしょう。ならば、
介護保険制度の中でこうした過失に対応できる仕組みを作るほうが
現実的かもしれない。