「胃ろう」と聞いたら、「不要な延命治療」を思い浮かべるほど
悪いイメージがあります。
でも、長尾医師は「ハッピーな胃ろうもある」と書いています。
P.53 いったん胃ろうを造ったら、もう二度と口からは食べられないと
思っている方が実に多いのですが、そんなことはありません。
口から半分、胃ろうから半分、という方はいくらでもいます。
まあ、両者の割合は人それぞれ。
また病気の時期でもそれぞれです。
細かく刻んだり、”とろみ”を付けるなどの工夫をして、
できるだけ口から食べていただき、
それでも足りない分を胃ろうから補うという考え方です。
いったんは完全胃ろうになっても、その後見違えるように元気になり、
やがては胃ろうが不要になった人を何人か経験しました。
私はそんな胃ろうを「休眠口座」ならぬ「休眠胃ろう」と
勝手に呼んでいます。これらの例のように、
「生きて楽しむための胃ろう」がたくさんあります。
しかし、、、、現実は厳しいようです。
P.54 「ハッピーな胃ろう」もいつかは「アンハッピーな胃ろう」に移行する
可能性が高い・・・
両者は連続しているのです。
最初は「生きて楽しむための胃ろう」だったのが、
時間の経過とともに老衰や認知症が進行して食べられなくなり、
延命手段としての胃ろうとしか言えない状態になります。
ここに至り、もしご家族が胃ろうを中止したいと申し出ても、
中止してくれる医師は少ないでしょう。
P.55 2012年、日本老年医学会から人口栄養の中止に関するガイドラインが
出ました。患者さんの不利益が利益を上回ると考えられる時は
「撤退」も選択肢だと、立場表明されました。
画期的なガイドラインだと評価されています。
このガイドラインを臨床現場にどう取り入れていくのかが、
今後の大きな課題だと思います。